大切な人を守るため、空をかけた人々がいた。

B29による東京への爆撃が始まったとき、
調布飛行場から飛び立った「飛行第244戦隊」だ。

彼らは、三式戦闘機「飛燕」を操り、
上空で体当たりし、パラシュートで脱出して帰還するという
極度に高度な任務を帯びて、B29を迎え撃った。

神風特攻隊の影に隠れ、ほとんど語られることもない。
しかし彼らこそが、帝都防空最後の砦だった。

率いたのは、「撃墜王」として名を馳せた最年少戦隊長。
弱冠24歳の小林照彦少佐。

毎朝、飛行場に程近い自宅から、
妻に見送られ、出かけては出撃して帰宅した。

あの大戦を生き抜き、
戦後、航空自衛官として、訓練を積む日々の中、機体の故障が発生。

244戦隊の存在など、
忘れてしまった人々が満ちる平和な街への墜落を避けるため
脱出することなく散っていった。

今を生きる私たちの為に、捧げられた犠牲の重さに気づくとき
自分の存在の尊さに気づき、人は、生き方を変える。

この作品に登場する少年少女は、
それぞれの戦いを通して自分の価値を”見つけ”なおし、
未来にむかって力強く、飛び立とうとしている若者たちだ。

中には、絶望的な事件に巻き込まれ
闇に落とされながら、再び舞い上がった子もいる。

社会の歪みに翻弄されながら、
もがく彼らと僕たちは出会った。

そして、託された希望を知り、
新たに歩き始めた道をともに示していくために、同じ空を見上げた。

かつて、大切な人のために散っていった
244戦隊が見つめた同じ空を。

この作品を、
小林照彦少佐と、妻千恵子をはじめ、
未来に希望を繋ぐため尊い命を捧げてくれた人々、
そして、今も社会の矛盾に挑む全ての人々に捧ぐ。